Research Press Release

遺伝学:古代のDNAから湖魚の早期導入が明らかに

Nature Communications

2025年4月9日

スペインのピレネー山脈にある標高の高い湖の堆積物コアから抽出された古代DNAの分析により、西暦7世紀にはすでに人間の手によって魚が湖に放流されていた可能性が明らかになった。Nature Communications に掲載されるこの発見を報告する論文は、レドン湖(Lake Redon)には歴史的証拠からこれまで考えられていたよりもはるかに早くから魚が存在していたことを示唆しており、人間活動がこれらの生態系に与える影響についてさらなる洞察を提供している。

高山湖は自然の障壁により歴史的に魚が存在しなかったが、14世紀から15世紀にかけてヨーロッパの高山湖に魚が放流されたことが歴史文書に記録され始めた。これらの記録は主に特定の湖における漁業権や取引についての詳細であるが、魚の放流がそれ以前から行われていたかどうかは不明である。

調査のため、Elena Faginらは、スペインのピレネー山脈にあるレドン湖から採取した、長さ30センチメートルの堆積物コアを調べた。この湖には現在、約6万匹のブラウントラウトが生息している。湖の堆積物からは魚のDNAは検出されなかったが、著者らは魚の寄生虫と魚の餌のDNAを特定し、魚の代理として使用することで、魚の導入を調査することができた。

魚の寄生虫に属するDNAは、西暦7世紀にはすでに確認されており、9世紀にはより一貫したシグナルが確認された。これは、この地域で魚の放流が記録され始める約500年前のことである。これは、この地域がローマ後期および西ゴート族(Visigothic)の時代に羊の放牧地として利用されていたことを示す、近隣の考古学的発掘調査による証拠と一致している。著者らは、周辺の人間の人口が変化しても、湖に生息する魚の個体数は一定であったと推測している。そこから、魚は定着していたが、気候の変化の影響を受けていた可能性があることが推測される。

これらの発見は、古代のDNAが歴史的な人間の活動を理解し、高山生態系への定住の影響について、これまで不明瞭であった部分を明らかにするのに役立つかもしれないことを示している。

Fagín, E., Felip, M., Brancelj, A. et al. Parasite sedimentary DNA reveals fish introduction into a European high-mountain lake by the seventh century. Nat Commun 16, 3081 (2025). https://doi.org/10.1038/s41467-025-57801-x
 

doi:10.1038/s41467-025-57801-x

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