Nature ハイライト
Cover Story:時間の問題:トリウムのアイソマーに関する知見が深まり原子核時計が現実に近づいた
Nature 573, 7773
現行の時間計測の基準は原子時計で、原子の2つの状態間の遷移に基づいて時間を測定する。今週号の2報の論文では、初の原子核時計の実現に近づいたことが報告されている。原子核時計は、原子核の状態遷移に基づく時計で、実現すれば原子時計と競合するようになると考えられている。研究の対象となっている原子核は、トリウム229(229Th)の原子核である。229Thの原子核には、数電子ボルトのエネルギー範囲に第一励起状態(229mTh)があり、この励起状態は既知の全ての原子核の中で最も低く、重要なことにレーザーで励起できる。しかし、トリウムには、励起エネルギーの正確な決定や229mThの直接光励起など、さまざまな課題がある。一方の論文ではB Seiferleたちが、基底状態から第一励起状態への遷移エネルギーの直接測定について報告している。もう一方の論文では笹尾登と吉村浩司(岡山大学)たちが、229Thを第二励起状態へ直接X線励起すると、素早く崩壊して229mThへ変化することを報告している。
2019年9月12日号の Nature ハイライト
材料科学:アーキテクテッド・マテリアルの新しい方向
古人類学:新たに発見された380万年前の頭蓋が明らかにするアウストラロピテクス属の起源
構造生物学:触覚が生じる仕組み
構造生物学:PIEZOが力に応答する仕組み
天文学:銀河系中心で噴き出すバブル
ナノスケール材料:ナノスケールでのグラフェンの振動のマッピング
化学:偏った決定
社会科学:オンライン憎悪の復元力
発生生物学:ビタミンCはマウスの繁殖力を高める
ウイルス学:A型インフルエンザウイルスのポリメラーゼの高分解能構造
構造生物学:哺乳類ミトコンドリアに含まれるプロトン輸送性トランスヒドロゲナーゼの構造と作用機構