Nature ハイライト
化学:偏った決定
Nature 573, 7773
データ駆動型の化学合成や材料合成のアプローチの方が、時間、装置、試薬の不足の影響を受ける可能性がある人間の実験者、あるいは単にデフォルトとして「お決まり」の試薬、合成プロトコル、溶媒を持っている人間の実験者が探索するよりも、徹底的でバイアスの少ない化学反応空間探索が可能になると暗に期待されている。しかし、機械学習法が、学習の元となるデータのバイアスを受け継いでおそらくそれを増幅させることを示す証拠がどんどん増えている。これは、機械学習法による材料発見にも当てはまるのだろうか。今回J Schrierたちは、アミンを鋳型とする金属酸化物という具体的な事例について、実際に文献で「よく見かける」試薬と「あまり見かけない」試薬が存在するにもかかわらず、こうした選好性は本質的な反応傾向を反映しないことを示している。従って、反応条件探索の場合、文献マイニングに基づくコンピューターによる方法では、元データに人為的なバイアスが内在するため化学空間の一部を見落とす可能性がある。
2019年9月12日号の Nature ハイライト
材料科学:アーキテクテッド・マテリアルの新しい方向
古人類学:新たに発見された380万年前の頭蓋が明らかにするアウストラロピテクス属の起源
構造生物学:触覚が生じる仕組み
構造生物学:PIEZOが力に応答する仕組み
天文学:銀河系中心で噴き出すバブル
ナノスケール材料:ナノスケールでのグラフェンの振動のマッピング
化学:偏った決定
社会科学:オンライン憎悪の復元力
発生生物学:ビタミンCはマウスの繁殖力を高める
ウイルス学:A型インフルエンザウイルスのポリメラーゼの高分解能構造
構造生物学:哺乳類ミトコンドリアに含まれるプロトン輸送性トランスヒドロゲナーゼの構造と作用機構