Nature ハイライト
進化学:中耳進化の異なる道筋
Nature 576, 7785
多丘歯類は、おそらくこれまでで最も繁栄した哺乳類の一群であったと考えられる。中生代の前半に進化を遂げた多丘歯類は白亜紀末の大量絶滅を乗り越え、始新世まで生き延びた。その名称が示すように特徴的な歯を有していた多丘歯類は、多くの点で齧歯類の先駆けとも言える存在だった。今回Y Wangたちが新たに発見したJeholbaatar kielanaeは、現在の中国で約1億2000万年前に生息していた多丘歯類であり、その標本には多くの構造、中でも中耳が極めて詳細に保存されている。哺乳類の進化は、祖先的爬虫類の下顎から多くの骨要素が頭蓋へとゆっくり移動して中耳の小骨を形成したことを特徴とする。これまで、この進化は独立して複数回起こったと考えられてきたが、それはJ. kielanaeにも当てはまるようである。著者たちは、哺乳類進化における顎の歯骨後方の骨の耳小骨への変化は、多丘歯類などの哺乳類系統において咀嚼機構が複雑さを増していったことと関係している可能性があると示唆している。
2019年12月5日号の Nature ハイライト
光物理学:例外点での非常に優れたセンシング
物性物理学:グラフェンにおけるハチミツ状の電子流の画像化
エネルギー科学:薄膜熱電体
冶金学:3D印刷のための新しいチタン合金
進化学:中耳進化の異なる道筋
神経科学:視覚を通じて脳地図を更新する仕組み
免疫学:T細胞分化における二次胆汁酸の役割
遺伝子工学:切断を必要としないゲノム編集法の拡張
構造生物学:ATP放出チャネル