Cover Story:特集:2019年を振り返る:今年の重要人物10人
Nature 576, 7787
2019年も終わりに近づき、今年も「Natureが選んだ10人」が発表された。いずれも科学に大きな影響を及ぼした人々で、アマゾン川流域での森林伐採急増の実態について自国の大統領を批判して国立宇宙研究所の所長を解任されたブラジルの物理学者Ricardo Galvão、生物多様性の専門家145名からなる委員会の共同議長を務め100万種が絶滅の危機に瀕していると報告した生態学者のSandra Díaz、温暖化に対する各国の取り組みの遅れが地球や次の世代の人々をいかに脅かしているかを世界に訴えたスウェーデンの若き活動家Greta Thunberg、カナダの電波望遠鏡に高速電波バースト(FRB)の最も優れたデータを収集する能力をもたらすのに一役買った天体物理学者Victoria Kaspi、数時間前に死んだブタの脳を生き返らせて生と死の境界に関する考察に挑んだ神経科学者Nenad Sestan、エボラ出血熱の発見時から40年以上にわたりその流行と戦い続けてきたコンゴ民主共和国の微生物学者Jean-Jacques Muyembe Tamfum、CRISPR遺伝子編集技術を用いて成人の細胞を修正する臨床試験の結果を初めて報告した幹細胞生物学者Hongkui Deng、保存状態の極めて良好な380万年前のAustralopithecus anamensisの頭蓋の化石を発見して人類の系統樹を一新した古生物学者Yohannes Haile-Selassie、実際に量子コンピューターが最高性能の従来型コンピューターより速く計算できることを実証した物理学者John Martinis、中国で行われた臓器移植の一部がドナーの同意を得ずに進められた可能性を示す証拠を明らかにした倫理学者Wendy Rogersの10人が選ばれた。表紙は、星や銀河を背景にして、未知の天体現象であるFRBからの放射を描いている。多くの電波望遠鏡、特にオーストラリアのスクエア・キロメートル・アレイ・パスファインダーによって、数百ものFRBが検出されており、その起源の謎の解明に役立っている。(Feature)
2019年12月19日号の Nature ハイライト
物性物理学:反強磁性トポロジカル絶縁体
物性物理学:強磁性トポロジカル絶縁体のヘテロ構造
ナノスケール材料:水の凍結における臨界核を実験で探る
考古学:最古の狩猟場面か
神経科学:前頭皮質の暗号
創薬:グラム陰性細菌に対する新規合成ペプチド
創薬:BAMを標的として病原菌を殺す
免疫学:腫瘍浸潤CD8 T細胞の維持と抗腫瘍免疫の調節
医学研究:抗腫瘍T細胞の再プログラム化
細胞シグナル伝達:KRASはヘキソキナーゼ1を介してがん細胞の代謝を促進する
構造生物学:T型カルシウムチャネルの構造