Nature ハイライト

神経科学:脳に侵入するタンパク質を可視化する

Nature 583, 7816

血液脳関門は、高分子治療薬やタンパク質治療薬の透過性が低いことで悪名高い。T Wyss-CorayとA Yangたちは今回、全血漿プロテオームを発見ツールとして用い、健康な成体マウスの脳実質に血漿タンパク質が容易に浸透するのを直接可視化した。彼らは、この過程が脳の内皮に特有の転写プログラムによって高度に調節されており、取り込みは血管の区分(静脈細胞、動脈細胞、毛細血管)によってかなり異なることを実証している。血漿取り込みの調節因子の多くが加齢に伴って下方調節され、その結果、リガンド特異的な受容体を介した脳へのトランスサイトーシスから、非特異的な脳へのカベオラトランスサイトーシスへと移行する。この移行は、トランスサイトーシスの負の調節因子と考えられるアルカリホスファターゼALPLを阻害すると部分的に軽減され得る。これらの知見は、加齢や神経変性疾患に伴って起こる血液脳関門の崩壊や神経毒性を持つ血漿タンパク質の「漏出」の増加の分子基盤を示している。著者たちは、異常調節による神経毒性タンパク質の侵入が、どのように神経炎症を引き起こして、加齢関連血管機能障害と反応性グリオーシスを結び付けるのか、そして今回の知見が、加齢関連神経変性疾患に対する中枢神経薬送達の難題を克服するのにどのように役立ち得るかを考察している。

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