Nature ハイライト 工学:カオスから情報を取り出す 2005年11月17日 Nature 438, 7066 光シグナルをカオス中に埋め込んで伝送するというのは特によいアイデアとも思えない。しかし、今週号でC Mirassoたちはまったく違う結果を示している。彼らは、アテネ首都圏で商用の光ファイバー通信網を使い、120kmの距離にわたってこのようなシグナルを送信できることを実証した。 情報をカオスシグナルに暗号化して送る場合、いくつか利点がある。1つには、カオスは良好な暗号化システムになる。一見このシグナルは純粋な雑音のように見えるが、受信機が自身のカオス出力シグナルを発生し、このシグナルが送信機のシグナルと同期できれば、カオスが除去されて真のシグナルを取り出せる。また、カオス「搬送」シグナルはブロードバンドシグナルであり、周波数帯が広いため、干渉を受けたときの耐性が高くなる。 カオス光シグナルを送信用レーザーで発生させ、受信機に備わった別のレーザーにフィードバック回路によって、送信機の出力と同期するカオス出力を生成させるというのが、このシステムの基本的な考えである。情報を運ぶ光シグナルは送信機でカオスシグナルと混合させるが、これは受信機で同期させたカオスを差し引くことによって解読できる。このプロセスは、過去に実験室内の非常に短い距離では実証されていたが、Mirassoたちは、これが実社会でも使えそうなことを証明した。 2005年11月17日号の Nature ハイライト 疫学:スーパースプレッディング現象の脅威と対策 工学:カオスから情報を取り出す 材料:左手系の実用化への一歩 発生:星状膠細胞発生制御におけるスターはSCL 気候:気候変動に対する地域ごとの取り組み : 目次へ戻る