Nature ハイライト

核物理:爆発する葉巻

Nature 439, 7074

陽子を一度に1個放出、あるいは2個放出する崩壊過程のどちらも起こり得る原子核の例が初めて見つかり、今週号に報告されている。  放射性原子は普通、その核からアルファ粒子、ベータ粒子あるいはガンマ線を放出して崩壊するとされる。しかし、不安定な原子核がばらばらになる過程はこれらだけではない。例えば、陽子(正の荷電を持つ粒子)の比率が異常に高い核は、個々の陽子を放出して崩壊することができる。このような陽子の多い核は天然にはかなり稀だが、人工的に引き起こした核反応で作り出せる。中性子と呼ばれる中性の粒子が、陽子どうしを核の中で結びつけておく「糊」の役目を果たすと考えられるが、中性子が十分に存在しない場合は陽子が飛び出す可能性がある。  このような現象は1982年に初めて観測され、その20年後に、陽子を多く含む鉄の同位体が2陽子を放出して放射崩壊することが発見された。すなわち1個でなく2 個の陽子が同時に放出されたのである。今回、I Mukhaたちは、1陽子放出および2陽子放出のどちらの過程によっても崩壊する原子核を発見した。  Mukhaたちは、この現象を銀の同位体94Agで観測した。この原子は2陽子を放出してロジウムの同位体92Rhに崩壊することができる。また、計算によれば 94Agの陽子を多く含む核は球形から外れる度合いが極めて高くなる。これは、陽子と中性子との比率が異常であるために、核が葉巻型にゆがんでしまうからである。Mukha たちは、陽子は葉巻の「両端」から放出されやすいと思われると述べている。2陽子放出型の崩壊の場合、両方の粒子が同じ端から放出されることも、あるいはそれぞれの端から1つずつ放出されることもある。

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