Nature ハイライト
分子生物:暗い夜を切り抜ける
Nature 439, 7074
哺乳類が冬眠中に経験するような暗黒の継続する状態(恒暗)が、代謝を調節して休眠状態を開始させることが明らかになった。C C Leeたちは、マウスを概日性の明暗サイクルではなく、継続的に暗黒条件下におくと、脂肪の分解に必要な酵素群のレベルが上昇することを実証した。これらの酵素は、休眠中の血糖値の維持を助けている。 恒暗への応答の鍵を握る仲介物質は、5'-AMPだとわかった。正常な明暗条件のもとでマウスに合成5'-AMPを与えると、休眠と脂肪異化酵素の発現が誘発される。休眠中の哺乳類は、末梢器官での一次エネルギー源をグルコースから脂肪酸に切り換えることで脳へのグルコース供給を維持している。Leeたちは、5'-AMPがこの過程の主な調節因子であると考えており、ヒトの肥満やインスリン抵抗性の2型糖尿病の治療にこの機構が利用できる可能性があると述べている。
2006年1月19日号の Nature ハイライト
海洋:海中の植物プランクトン分布に地球温暖化の影が忍び寄る
核物理:爆発する葉巻
分子生物:暗い夜を切り抜ける
神経:学習の面倒をみる分子
宇宙:塵となって地球に降り注いだ太古の小惑星
植物:ホルモン受容体の探索が実を結ぶ