Nature ハイライト 化学:ペダルの力 2006年3月23日 Nature 440, 7083 別の分子をねじることができる、光で駆動される1対の分子ペダルが相田卓三たちによって報告された。この分子サイズのデバイスにより、1つの部品に生じた動きをどうすれば他の部品に伝達できるかが示され、「分子機械」についてのこれまでの研究がさらに進展したことになる。 光の照射で形が変わる分子を使って、分子モーターなどの可動部分をもつデバイスを作れることはいくつかの研究グループによって示されている。しかし、このように微小な部品に有用な作業を実行させるためには、おそらくほかの分子との連結が必要になる。これは例えば、自動車エンジンでピストンの機械的動きがクランク軸やギアを経て車輪に伝達されるのと同じことだ。 相田たちが作った1対の分子ペダルでは、分子の一部分が光を吸収するとねじれが生じ、これによってペダル部分が分子のボールベアリングのようなものの周りで、ハサミのように?転する。ここからさらに、このスイング運動を別の分子に伝達させるのがむずかしかったのだが、ペダルの間に「ゲスト」分子が挟まれるように設計することでこれも達成された。ペダルが回転すると、このゲスト分子がねじれるのである。彼らは、このような連動運動により、分子スケールの過程を遠隔操作することが可能になると考えている。 2006年3月23日号の Nature ハイライト 医学:鳥インフルエンザ感染がヒトの間で広がらない理由 環境:保護地区だけではアマゾンを守れない 農学:イネ病原体の感染の仕組み 地球:メタン生成菌の最古の証拠 工学:チップの中へ光を押し込む 化学:ペダルの力 目次へ戻る