2004年、タイで鳥インフルエンザH5N1型ウイルスにより飼いネコが死んだことが初めて報告された。それ以来、動物園で飼われていたトラ147頭が、ウイルスに感染したニワトリを餌として与えられたために死亡または安楽死させられたことなど、多数の例が世界中で報告されている。ネコ科動物の鳥インフルエンザウイルスによる死亡数が世界各地で増加する中、今週号のCommentaryでは、鳥インフルエンザウイルスの広がりや進化とネコのかかわりを再検討することを主張している。 A Osterhausたちは、ネコがH5N1型ウイルスに感染しやすいことの原因に関する最新の報告や実験研究について述べ、このウイルスの世界的な広がりを阻止する作業にネコがもたらすリスクについて論じている。また、ネコが家禽や野鳥との接触を介してウイルスに感染し、さらにそのネコの気道や消化管から排出されるウイルスにほかのネコが感染する可能性を明らかにした。ウイルスに感染したニワトリ肉を餌として与えられたネコでは腸から直接感染が起こりうること、これは哺乳類におけるインフルエンザ伝播の今まで知られていなかったルートであることも指摘している。こうした証拠にもかかわらず、世界保健機関(WHO)などの主要な組織は、鳥インフルエンザウイルスの流行におけるネコの影響をいまだに見過ごしているという。 著者たちは、ネコ科やその他の哺乳類宿主中でウイルスが変異してさらに危険な系統を作り出す可能性は無視できないと結論しており、鳥インフルエンザウイルスがヒトに飛び火するのを防ぐための監視や予防対策をさらに増やすべきだと述べている。