特性にむらがなく、信頼性が高くて安定な分子電子デバイスを作製する技術が今週号に紹介されている。電子デバイスを、従来のように金属と半導体からではなく、個々の有機分子から作製するという考えが初めて提案されたのは1970年代のことだが、信頼性の高いデバイスを作製するのはなかなかむずかしかった。 B de Boerたちは、2枚の金属電極の間のギャップを1分子の厚さの有機層が架橋する、構造や性質のはっきりした分子接合を作製する技術について報告している。そして、この方法が簡単かつ安価であって、標準的な製法で作ったチップに集積するのもたやすく、「実用的な分子エレクトロニクスを可能にすると思われる」と述べている。 分子電子デバイスを作製する試みの多くは、「自己集合単分子膜」という、たった1個の分子の厚みしかない有機分子膜を使っている。このような分子膜を使って、例えばダイオードなどのデバイスを作製しようとすると、これまでは膜中の分子と隣接する電極との間で電気的コンタクトの不良が発生することが多く、電気特性が大きく変動することがわかっていた。 研究チームは今回、金属電極との良好なコンタクトを形成するというこの問題を、2つの新しい技術を取り入れることで解決した。まず1つめに、絶縁性プラスチックフィルムに下地の金電極に通じる微細な円筒形の穴をあけて、そこに自己集合単分子膜を堆積した。この方法ならば単分子膜が保護されるので、膜の安定性は数か月にわたって保たれる。さらに、導電性ポリマー薄層で分子膜を被覆しておくことで、上部電極との良好なコンタクトを確保した。このポリマーは一種の軟らかいクッションとして作用するとともに、金属フィラメントの侵入を阻止する役割を果たしている。