Nature ハイライト 医学:線虫は新薬の産みの親 2006年5月4日 Nature 441, 7089 実験によく使われる線虫(Caenorhabditis elegans)が、有用となりそうな新薬の発見と、それが体内で働く仕組みを解明するのに非常に役立つことがわかった。 P Royたちは、線虫に1万4100種類の小型分子を与え、線虫を死なせたり、成長、運動、あるいは形態に異常を引き起こしたりする308の小型分子を見つけだした。そしてそのうちの1つをネマジピン-Aと命名して、研究を行った。このネマジピン-Aは広く処方されている降圧剤の1,4-ジヒドロピリジン(DHP)に似ており、DHPは一部のカルシウムチャネルのサブユニットの1つに結合することが知られている。 ネマジピン-Aの標的タンパク質をin vivoで調べるために、Royたちは18万匹の線虫変異体を調べて、この薬の影響を抑制する遺伝子を探した。その結果、ネマジピン-Aはegl-19とよばれる遺伝子を介して作用することが明らかになった。egl-19はカルシウムチャネルサブユニットの遺伝子でもある。Royたちは、線虫を使ってさらに遺伝子スクリーニングを行えば、臨床的に重要な薬剤であるDHPとin vivoのカルシウムチャネルとの相互作用の仕組みを明らかにできそうだと考えている。今回の「原理証明」実験で、新しい小型分子の迅速な同定とその生理的標的タンパク質の発見に線虫が使えることが実証された。 2006年5月4日号の Nature ハイライト 生態:温暖化に繁殖時期を合わせられない渡り鳥 宇宙:明らかになった土星の自転速度 医学:線虫は新薬の産みの親 工学:頼りになる分子デバイス 材料:本物の金属になりうるプラスチック 進化:硬骨魚類の頭蓋の秘密を握る化石魚類 目次へ戻る