Nature ハイライト 進化:ヒトをヒトたらしめる遺伝子 2006年9月14日 Nature 443, 7108 ヒトの独自性は何によって生み出されるのだろうか。この疑問に対する比較遺伝学的研究から、「ヒトらしさ」を備えるのにかかわっていると思われる遺伝子の1つが見つかった。興味深いことに、この遺伝子は発生中の胚の新皮質、すなわち脳の最も高度な情報処理機能の多くを司る部位で発現している。進化の過程でチンパンジーとヒトの分岐点まではほとんど変化せず、その後ヒトにおいて加速進化したゲノム内非コード領域を拾い出したところ、この遺伝子が浮上してきた。ヒト系統で最も急速に進化しているゲノム領域の1つが、HAR1Fと名づけられたまだ調べられていないRNA遺伝子に対応していたのである。次に遺伝子発現について調べたところ、HAR1Fは、新皮質の神経細胞の多くが脳内での機能を確立する妊娠中の重要な期間に、カハール・レチウスニューロンとよばれる細胞で活性化していることがわかった。 2006年9月14日号の Nature ハイライト 生理:カルシウムポンプ 進化:ヒトをヒトたらしめる遺伝子 生化学:いろいろ選べる仕組み 宇宙:見つかった中で最も古い銀河 物理:バブルメモリーが戻ってくる? 化学:8個1組の酸素 気候:激しさを増していく熱波 腫瘍:p53の2つの顔 目次へ戻る