Nature ハイライト 医学:老化に関する2説 2006年12月21日 Nature 444, 7122 ヒトXPF遺伝子の変異はこれまで、軽度の早老症に関係するとされてきた。しかし今回、重度の早老症の原因となる、これまでに知られていなかったXPF変異が15歳の少年で見つかった。この変異型XPFについてわかった性質から、まったく異なるように思える2つの老化に関する理論を統合できるかもしれない。一方の理論では、老化は遺伝的に制御されているとしており、もう一方の理論では、老化はDNAの損傷がしだいに増えていくために起こると考えているが、この両方ともが正しい可能性が出てきたのだ。この早老症候群のモデルとして遺伝子操作により作り出されたマウスでは、若い内に正常な老齢マウスと同じ特徴、つまりインスリンシグナル伝達の低下、細胞死の増加、抗酸化活性およびDNA修復活性の亢進などが数多くみられるようになる。これは、DNA損傷が加齢に伴う機能低下を引き起こすとするモデルと一致するが、DNA損傷の蓄積速度や機能低下の速度には、遺伝的要因、特にインスリンシグナル伝達系が影響している。このことから推測して、DNA修復系を活性化できれば、寿命を延ばしたり、高齢になってからの健康状態を改善したりできるかもしれない。 2006年12月21日号の Nature ハイライト 運動学:無理をしたがる人々 生物保全:オオトカゲの「処女降誕」 がん:血液供給を妨げる 医学:老化に関する2説 宇宙:持続時間の問題ではない? 宇宙:水星磁場の挙動を探る 物理:自由中性子のベータテスト 神経:聴覚神経のチューニング 細胞:ボツリヌス毒素 目次へ戻る