Nature ハイライト 医学:翻訳を正常に終結させるPTC124 2007年5月3日 Nature 447, 7140 メッセンジャーRNAからタンパク質への翻訳が最後まで行かずに中途で終わってしまうために起こる遺伝病は数多くあり、筋ジストロフィーもその1つである。今回Welchたちは、低分子化合物PTC124によって、翻訳装置が翻訳の中途終止の原因となる部位を迂回できるようになり、しかも、mRNAの末端では正常に翻訳を終結できることを報告している。この薬剤によって、ヒトとマウスの細胞では筋ジストロフィーで変異が生じている遺伝子の翻訳が正常に戻り、ヒト筋ジストロフィーのモデルであるmdxマウスでは筋肉の機能が回復した。この研究結果から、PTC124と似たような薬剤をナンセンス変異を標的として用いれば、さまざまな病気でタンパク質の機能を回復できる望みが出てくる。現在、筋ジストロフィー患者と嚢胞性繊維症患者を対象に、PTC124の臨床試験が行われている。 2007年5月3日号の Nature ハイライト 化学:112番元素の化学的性質 医学:翻訳を正常に終結させるPTC124 細胞:世界中の光を集める 宇宙:火星の氷を掘り出そう 物理:反強磁性を自在に制御する 地球:地震の新しいカテゴリー 生態:水不足の熱帯 免疫:キチンアレルギー 目次へ戻る