Nature ハイライト 進化:極めて初期の細胞膜 2008年7月3日 Nature 454, 7200 現在みられる生物の細胞膜を作っているリン脂質は、極性や電荷をもった分子にとって手ごわい障壁となっており、細胞が外的環境と分子を交換するためには複雑なチャネルやポンプを必要とする。生命進化の初期における原始的な細胞がどのようなものであったかを考える際には、このことが大きな問題となる。簡単な細胞は、輸送装置なしで、どうやって複雑な栄養素を取り込むことができたのだろうか。ハーバード大学の研究グループが作出したモデル「原始細胞(protocell)」によって、この問題の答えと思われるものが得られた。脂肪酸やその誘導体は単純な両親媒性物質であり、二重層の膜に包まれた小胞を形成するので、初期の原始細胞の細胞膜成分として魅力的な候補である。そのような細胞膜をもった原始細胞は、ヌクレオチドのような荷電分子を取り込むことが可能で、また遺伝物質のような、より長いヌクレオチド多量体も細胞内に保持できることがわかった。 2008年7月3日号の Nature ハイライト 遺伝:「幹細胞になる」のを阻む障壁 進化:極めて初期の細胞膜 材料:よくのびるクリーム 化学:水素原子を強く引っ張る 生態:海洋酸性化の生態系への影響 生理:心臓の修復 神経:塩にひかれる 医学:コカインが欲しい! 目次へ戻る