遺伝子重複は、進化で新しいものを生み出す重要な土台になるが、このような新規性が生じるのは遺伝子重複の前なのか後なのかについては、激しい議論が行われている。多くの遺伝子は有害な変異が蓄積するとゲノムから失われるが、中には、もとの機能を分割したり新しい機能を付け加えたりすることによって、ゲノムから消える運命を免れるものもある。重複した遺伝子の運命として、まだ立証されてはいないものの非常に興味深いのが、分かれた遺伝子コピーに正の選択が働いて、もとの遺伝子の機能が改良されるというものである。D Des MaraisとM Rausherは、植物のアントシアニン経路の重要な酵素をコードする遺伝子でこのような改良が実際に起こってきたことを明らかにし、このような現象はこれまで考えられていたよりも一般的なのではないかとしている。