Nature ハイライト

工学:水を吸い上げる合成樹木

Nature 455, 7210

植物の葉から水が蒸発すると、ランプなどの芯(ウイック)でみられるような受動的吸い上げ作用によって、根から水が引き上げられる。この「蒸散引力」によって、最高で合成ウイックの100倍までになる圧力が発生する。今回コーネル大学の研究チームは、合成ヒドロゲル中に、植物の蒸散にみられる主要な性質と蒸散引力を備えたマイクロ流体システムを作った。このマイクロ流体「合成樹木(synthetic tree)」は、未飽和蒸気中から液体水を抽出し、負圧の液体相にする「根系」をもつ。液体水は、大きな負圧下で「幹」を通って流れ、「葉」に似た系を介して蒸発する。この過程は、蒸散の凝集-張力理論を実証するものである。そして、この合成樹木は準安定液体の特性研究のための有用な基盤や、化学処理過程、熱伝達、環境工学における新しい水管理技術の出発点などにもなりそうだ。

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