西暦79年の噴火でポンペイとヘルクラネウムを破壊したことで歴史に名を残しているヴェスヴィオ火山は、それ以来何度もマグマを噴出してきた。新たな噴火は、ナポリ湾地域に住む70万人以上の人々の生命を危険にさらす可能性があるため、この火山の噴火活動の予測は重要な問題となっている。マグマ溜まりの深さは、マグマの性質と噴火様式に大きな影響を与える。過去2万年の間に起きた噴火にマグマを供給したマグマ溜まりは、ほぼ同じ場所にとどまっていると考えられている。しかし、ヴェスヴィオ火山の過去の噴火から得られた物質の分析に基づいてマグマ溜まりの条件を再現したところ、1万8,500年前のPomici di Base噴火と1944年の噴火の間に、マグマ溜まりが9〜11 km上昇したことがわかった。このマグマ溜まりの移動とそれがマグマ供給速度へ及ぼす影響は、予想されるヴェスヴィオ火山の噴火シナリオを明らかにする際に考慮すべきだろう。