親戚に気前の良い人もいればケチな人もいるのはなぜだろうか。そのわけを説明しようとする研究者たちの役に立ってきたのが細菌である。どうやら、鍵は局所での資源入手の可能性にあるらしい。進化生物学の研究者たちは、献身という行動をなかなか説明できずにいる。同じ遺伝子をたくさん共有する血縁個体と協力することが道理にかなっている場合もある。しかし、遺伝的に似ていることはマイナスにも働く。子孫たちが近くで暮らし、同じような資源をめぐって競争することになれば、協力などしそうにない。A S Griffinたちは今回、この難問をときほぐすために病原菌である緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)を使い、協力に及ぼす競争の影響を調べた。微生物群集には、協力的な働き者とちゃっかり他人の成果を頂くたかりやがいる。働き者の細菌はシデロフォアというタンパク質を放出し、このタンパク質が環境にある鉄イオンと結合して鉄イオンを細菌が利用できる形にすることで、自分たちの資源を増やす。一方、たかりやの細菌は他の細菌が作ったシデロフォアを食べあさる。Griffinたちは、血縁度が高まるほど、働き者の数も産生されるシデロフォア量も多くなることを見出した。予想された通り、血縁度が高まれば協力も高まりうるのだ。ただし、他のコロニーの細菌を混ぜて競争を増やすと、たかりを働く機会がずっと増えるので、シデロフォアの産生量は減る。「血縁関係は大いに重要だが、競争の規模に左右される」とD C QuellerはNews and Viewsで解説している。