Nature ハイライト 視覚:進化してきた眼 2008年11月20日 Nature 456, 7220 海生プランクトンの群集が光条件に応じて海洋表面と深層との間を行ったり来たりできるのは、無脊椎動物の非常に小さい幼生が、2個の細胞でできた眼点によって光強度を感知するためである。眼点はダーウィンが哺乳類の眼の進化の起源として考えた「原始の眼」を連想させるが、眼点からの感覚情報が運動へと変換される仕組みはよくわかっていなかった。Jékelyたちは、海生の環形動物Platynereis dumeriliiの幼生では、眼点への光照射によってコリン作動性のシグナル伝達を介して周辺の繊毛の動きが変化することを見いだした。コンピューターモデルによって、この局所的な作用が走光性に重要な意味をもつことが確かめられ、この幼生がらせん状の遊泳パターンをとると進路決定の精度が高まることが予測された。光の感知と繊毛の運動制御とがこのようにして直接的に結びつくことが、「原始の眼」の特徴であり、動物の進化における画期的な出来事だった可能性がある。折り込み特集の眼の進化についてのNews Feature(p.304)も参照されたい。 2008年11月20日号の Nature ハイライト 生理:アンモニアを取り除く 細胞:成人の精巣幹細胞 細胞:やっと見つかった哺乳類のホリデイジャンクション解離酵素 宇宙:高エネルギー宇宙線 物理:超伝導:ありそうもないペア 気候:大西洋の海洋循環は温室効果ガスに影響を及ぼす 遺伝:マンモスのゲノミクス 視覚:進化してきた眼 目次へ戻る