Nature ハイライト 環境:1,000世代の後 2004年9月30日 Nature 431, 7008 大気中のCO2濃度が上昇していくのに植物はどのように反応するのだろうか。CO2濃度の上昇に対する植物の生理的な反応を解明することは重要である。それは、気候変化の予測が、植物の反応の変化にある程度影響されるからだ。S CollinsとG Bellの報告によれば、今のところ事態はあまり楽観的とはいえない。単細胞緑藻Chlamydomonas reinhardtiiを1,000世代にわたって高濃度のCO2条件下で培養したこの実験では、CO2濃度が上昇しても何とかやっていける「スーパー緑藻」は出現しなかったのである。緑藻が講じた対応策の1つは細胞内でCO2を濃縮するというものだった。しかし、この能力は、高濃度CO2条件下で成長させた緑藻だけでなく、通常の大気中と同じCO2濃度条件で培養した緑藻でも同様に生じた。また高CO2濃度条件で培養した緑藻は、通常のCO2濃度条件に移すと非常に弱いことがわかった。Collinsたちは、高濃度のCO2が、通常条件下では有害に作用する緑藻遺伝子群を活性化させると結論している。高濃度のCO2条件下でうまくやっていけるように特異的に「進化」したらしい細胞は、実際には高濃度では「正常な」細胞と変わりなく、通常のCO2濃度では正常な株よりもかなり生育しにくいのである。 2004年9月30日号の Nature ハイライト 地球:地球の「ハム」を特定する 海洋:地球最古の生命体の再評価 医学:抗癌剤の再評価が必要 考古:東への長征 環境:1,000世代の後 進化:血のつながりは運命しだい 目次へ戻る