Nature ハイライト 医学:レトロウイルスのインタソーム 2010年3月11日 Nature 464, 7286 HIV-1のようなレトロウイルスのインテグラーゼタンパク質は、ウイルスゲノムを宿主のゲノムへ組み込む反応にかかわっており、こうして組み込まれたウイルスは細胞内でいつまでも存続できる。この組み込みはウイルス複製に極めて重要であることから、インテグラーゼは薬剤開発の標的となっており、ラルテグラビルやエルビテグラビルなどの複数の阻害剤が治療に用いられていたり、臨床試験中だったりしている。新しい抗レトロウイルス薬の探索には、インテグラーゼの基質であるDNA上に作られるインテグラーゼ複合体(インタソームともよばれる)の構造がわかっていないことが妨げとなっている。今回、プロトタイプ泡沫状ウイルスとして知られる非病原性レトロウイルスの完全長インテグラーゼの結晶構造が、同種ウイルスDNAと複合体を作った状態で決定された。この構造によって、ゲノム組み込みの生化学的反応の詳細が示されただけでなく、現在使われている阻害剤がこの過程にどのような影響を与えるのかも明らかになった。 2010年3月11日号の Nature ハイライト 医学:感染を阻止 医学:HIVの複雑な免疫学 医学:レトロウイルスのインタソーム 発生:片身替りの鳥 遺伝子:ピロリ菌のトランスクリプトーム 宇宙:一般相対性理論の検証 物理:元の形に戻る高分子 大気:対流圏でも起きている塩素汚染 発生:雌だけの種 細胞:塩の味 目次へ戻る