Nature ハイライト

生化学:クモ糸がもつ2つの特徴

Nature 465, 7295

多くのタンパク質は、濃度が高いと繊維構造を作るが、クモ糸タンパク質は違う。クモ糸タンパク質は繰り返し回数の多い反復領域の両側に反復を含まない(non-repetitive;NR)末端ドメインがあり、高濃度で貯蔵されている際には高い可溶性を示すが、必要に応じて極めて丈夫な繊維へと変化する。このような挙動を可能にする分子機構はまだ解明されていないが、今回2つの構造研究から新たな手がかりが得られた。Askariehたちは、キシダグモ科のEuprosthenops australisのしおり糸(クモが移動の際の道標や、ぶら下がる際の命綱にする糸)に含まれるスピドロインのN末端ドメインについて、分解能1.7 ÅのX線結晶構造を決定した。この構造から、この高度に保存されているドメインが、スピドロインが時期尚早に凝集するのを防いだり、出糸管(silk extrusion duct)中でpHが低下していくにつれて重合を引き起こしたりすることで、クモ糸の集合状態を調節する仕組みが明らかになった。一方Hagnたちは、ニワオニグモ(Araneus diadematus)のしおり糸タンパク質フィブロイン3の、C末端NRドメインの溶液中での構造を決定した。彼らは、化学刺激、機械刺激によって活性化されて、このタンパク質の貯蔵形態と集合形態との間でコンホメーションを切り替える構造スイッチの存在を観察している。

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