Nature ハイライト

医学:膵臓がんの時間経過

Nature 467, 7319

C Iacobuzio-Donahueたちは、全ゲノムにわたるエキソーム塩基配列解読により、同じ患者の原発性膵がんと複数の転移巣の解析を行った。腫瘍は別々のサブクローンからなることがわかり、それぞれの転移性がんクローンが原発性腫瘍の中で進化してきた道筋が明らかにされ、腫瘍の進行の時間スケールが推定された。これらのデータに基づいて、膵臓での腫瘍発生から親となる非転移性腫瘍の形成までの平均期間は11.8年、指標となる転移性クローンが発生するにはさらに6.8年かかると著者たちは推定している。このデータは、がんを比較的早期の形で検出できる可能性のある期間がかなり長いことを示している。一方、P Campbellたちは次世代シーケンシング技術を使って、膵臓がんの患者13人で染色体再編成を検出した。この結果は、患者間でゲノムにかなりの不均質性があることを明らかにしており、ゲノム不安定化が現在進行中で、転移形成過程で進化が起こることを示している。しかし、調べたほとんどの患者で、見つかった遺伝子再編成の半分以上はすべての転移性と原発性腫瘍に存在しており、これらが膵臓がんの初期および進行期での治療介入の標的候補となることが示された。

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