生まれてからずっとケージで飼育されてきたラットに自由に動き回れる空間を与えると、脳の構造や機能に微妙な変化が引き起こされるという。この研究成果から、大人になってもラットの脳には意外に可塑性があることがわかる。D B Polleyたちは、ケージで飼育した実験用ラットを、表土やトンネルがあり、さまざまな質感や形の物体をあちこちに置いたもっと自然に近い環境に移動させて、脳の活動を調べた。ラットの行動が変化すると脳の活動も変化し、ヒゲから入ってくる情報を感じ取る脳の部分には、機能的にも形態的にも変化が見られた。脳領域の機能的構成や可塑性について知られていることの多くは、標準的な実験用ケージで飼育されたラットで得られたものだ。その飼育環境を変化させることで今回、重要な脳領域に大規模な機能的精緻化が引き起こされることが示された。