Nature ハイライト 遺伝:素敵なペア 2004年6月10日 Nature 429, 6994 人は、ほとんどの遺伝子を2コピーずつもっている。医学的に重要な遺伝病の多くは、「劣性」遺伝子によるものだ。つまり、遺伝子のコピーが2つとも変異したものでない限り発症しない。変異遺伝子を1コピーだけもつ人は、変異コピーの異常を健全なコピーが補うため、健康でいられる。マウスもヒトと同じで、ほとんどすべての遺伝子が2コピーずつあり、ヒトの病気の研究に使われることが多い。重要な病気の症状が劣性遺伝子によってもたらされるというのは困った問題で、劣性の形質が外に現れるマウスをつくるためには集中的育種方法が必要になる。だが、A Bradleyたちが今週号で発表している新しい方法が助けになりそうだ。彼らは培養胚性幹細胞を使って、遺伝子の両方ともが劣性のゲノムをつくった。これによって、遺伝子やそれがコードする生化学経路の研究に役立つ哺乳類細胞が入手できることになり、多数のマウスを使って育種実験をしなくてすむ。この新しい方法で使われる細胞は、ブルーム症候群の患者に見られる変異をもち、その結果、劣性遺伝子が2コピーそろいやすくなるため、劣性形質が健全な遺伝子コピーによって隠されていない細胞を得ることができる。Bradleyたちはこの系を使って、DNA複製における、いわゆる「ミスマッチ修復」の異常の遺伝や、これと癌とのかかわりについて調べた。竹田潤二たちも、胚性幹細胞を使った同様な方法の開発と、それを使った細胞タンパク質生合成経路の研究について報告している。 2004年6月10日号の Nature ハイライト 環境:地域差のある純一次生産利用 物理:怪しい電場の正体を解明 遺伝:素敵なペア 宇宙:共鳴を引き起こす離心率 細胞:適応不能者 生物工学:天然カフェインレス・コーヒー 目次へ戻る