ガラスは、通常は結晶性の材料が無秩序状態で「凍結」した、固体と液体の間のような変わった物質である。溶融物質が急速に冷却され、その構成原子が秩序正しく結晶格子に整列する機会を逸すると、ガラスが形成される。シリカや硫黄のような少数の物質のみが、「ガラス形成物質」に適した性質をもつと考えられる。ガラス形成に必要な冷却(焼入れ)速度は実行できないほど速いので、ほとんどの物質はガラス状態にならない。ガラス製造で注目される材料の1つはアルミナ(Al2O3)で、アルミナをベースとするガラスは、理論的に、優れた力学的・光学的特性をもつと考えられる。しかし、溶融アルミナが凝固してガラス状態になるのに必要な冷却速度は非常に速く、毎秒1,000万K程度である。そのため、アルミナをガラス状態にするには他の酸化物との合金にしなければならないが、それでも合成されるガラスは小さ過ぎて実用にならない。今週号でA A Rosenflanzたちは、アルミナを希土類酸化物との合金にすると、アルミナが大部分を占めるバルク状のガラスやガラスセラミック複合材が比較的容易に作れることを報告している。この方法により、広範囲に利用される今までにないガラスが生まれる可能性がある。そうしたら、童話に出てくるようなガラスの靴も夢ではないかもしれない。