Nature ハイライト

生化学:穴がいっぱい

Nature 430, 7001

生き物には無数の穴がある。自然に小孔を作る性質を持つタンパク質がチャネルを形成し、細胞はそれを使って互いに、また外界と連絡を取っている。穴のあるタンパク質にはウイルス粒子の外被を形成するものや、抗生物質活性をもつものがある。分子を中に閉じこめるなどの目的で合成系で利用されるものや、分子レベルでの感知に利用されるものもある。しかし、穴をもつタンパク質を最初から設計しようというのは大変な難問である。なぜなら、タンパク質では構造と機能が一体化しているため、標準的な基本的工学手法では到底うまくいかないからだ。合成穴構造で、安定かつ周期性構造を持つ固体構造、あるいは溶液中の構造を組みたてるようなものは未だに作り出されていない。 V Percecたちは、さまざまな状況下で自然に集まって小孔を形成する合成ペプチドのライブラリーについて報告している。自発的な集合過程で充分しっかりした構造が作られるため、ペプチドの構造にさまざまな修飾を加えることができ、また初期の実験でこうして作った小孔が機能を発揮することが明らかになっている。Percecたちは、このような自己集合分子を使えば、多孔性構造に由来する機能を備えたさまざまな系を、生物からヒントを得てデザインできるだろうと期待している。

2004年8月12日号の Nature ハイライト

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