Nature ハイライト

Cover Story:スピンを使う熱サイクル:巨大スピンゼーベック効果は熱エンジンの新規な基盤を示唆している

Nature 487, 7406

熱サイクルは、現代文明が消費するエネルギーのほぼすべてを提供している。蒸気やガスと比べると後発といえる熱電サイクルはゼーベック効果を介して熱を発生し、温度勾配中に導体を置いたときに電圧が発生する。2008年に発見されたスピンゼーベック効果 (go.nature.com/dlvhz2)では、スピン偏極材料に熱勾配をかけると、隣接する非スピン偏極材料に空間変動する横方向スピン流が発生し、これはスピントロニクスにおける新しい研究分野につながった。今週号ではJaworskiたちが、非磁性だが強いスピン–軌道結合とフォノン–電子ドラッグを持つ材料であるアンチモン化インジウム(InSb)で見られる、ゼーベック効果に似てはいるが、3桁強力な「巨大スピンゼーベック効果」について報告している。著者たちは、この現象が生じる機構は磁気交換ではなく、スピン偏極のみに依存していると考えている。この結果は、スピンゼーベック効果がスピンを用いる熱エネルギー変換器を実現するほどの大きさとなりうることを示していると著者たちは論じており、既存の技術と競合しうる可能性が出てきた。(Letter p.210; N&V p.180)

目次へ戻る

プライバシーマーク制度