今週号に掲載された6本の論文は、現在も火星で稼働しているNASAの2台の火星探査車スピリットとオポチュニティによって得られた科学的データの最新の解析結果について報告している。 M Golombekたちは、火星探査車の着陸前に行われた人工衛星と望遠鏡による調査が、着陸地点の特徴を正しく予測したものだったかどうかを調べている。その中で、着陸地点の安全性は正確に予測できていたが、地質学的評価はあまりうまくいかなかったとしており、遠く離れた場所で得られるデータには特有の不確定さが伴うことがはっきりした。 J Bell 企世たちは、火星の衛星フォボスとデイモスの太陽面通過について報告しているが、このような現象を他の惑星の表面から記録したのはこれが初めてである。A Wangたちは、スピリットの着陸地点であるグセフクレーターの火山岩が、硫黄、臭素、塩素および酸化鉄に富んだ物質で覆われていることを発見し、このような岩石が酸性の水と相互作用して、その後水が蒸発した可能性があるとしている。 A Yenたちは、塵粒子が火星上のちょうど裏側にあたる場所でも同様な物質からできていることから、大気の循環が塵をその発生源から遠くまで分布させているようだと報告している。水と反応しやすいカンラン石の存在からは、塵が水に完全に浸されたことがないと考えられる。また、この二つの地点で得られた暗い色の土壌堆積物は同じような組成を持っていて、それらが局所的な岩石のみに由来するのではなく、火星全体の組成を反映している可能性があることを示している。 W Goetzたちはまた、大気中の塵の中にカンラン石だけでなく、塵を磁化させる鉄鉱物である磁鉄鉱が含まれていることも発見している。R Sullivanたちは、砂嵐の際に形成される明るい筋状痕の起源などの、火星表面の風に関連した地形について研究した。そして、メリディアニ着陸地点の風紋の粒子分布を調べた結果、砂粒子には理論予測よりも風で運ばれにくいものがあると結論づけている。 「夜空に浮かぶ赤い点でしかない火星を眺めると、探査車をその特定の場所に着陸させたことは、信じられないくらいすごいことに思えてくる」とD CatlingがNews and Viewsで述べている。