Nature ハイライト

遺伝:アブラヤシのゲノムから明らかになったその栽培史

Nature 500, 7462

アブラヤシの異なる果実形態。殻の薄いtenera(右)の油脂収量は殻の厚いdura(左)のものより30%も多い。
アブラヤシの異なる果実形態。殻の薄いtenera(右)の油脂収量は殻の厚いdura(左)のものより30%も多い。 | 拡大する

Credit: MPOB

アブラヤシは現代の最も重要な作物の1つである。今回2つの研究によって、アフリカ原産のギニアアブラヤシ(Elaeis guineensis)と南米原産のアメリカアブラヤシ(Elaeis oleifera)という2種の遺伝学的特性が明らかになった。アブラヤシから取れるパーム油は、世界で消費される食用油のおよそ半分を占めており、また、バイオ燃料としても利用されている。しかし、多くの地域ではアブラヤシの単一栽培によって貴重な自然林が減少しており、議論を招いている。1つ目の論文では、ギニアアブラヤシの1.8ギガ塩基のゲノム塩基配列とアメリカアブラヤシの概要ゲノム配列の解析から、油脂の生合成に関わる遺伝子やその調節因子、およびゲノム進化の記録を明らかにする手がかりが得られたことが報告されている。ギニアアブラヤシの栽培化や育種における重要な出来事の1つは、ココナツのような厚い種子殻の消失だが、2つ目の論文では、このような異なる果実形態を指定するSHELL遺伝子の変異を突き止めたことが報告されている。これにより、植民地時代以前のアフリカで生じたSHELL遺伝子の変異が、この単一遺伝子雑種強勢およびギニアアブラヤシの高い生産性をもたらしたことが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度