Nature ハイライト

進化:節足動物の頭部の謎を解く

Nature 437, 7062

ウミグモ類は海に生息する謎の多い動物だが、これをA Maxmenたちが解剖学的に調べた結果、動物学研究の世界で何十年も続いていた議論に決着がつけられそうだ。  節足動物(昆虫類やクモ類、甲殻類など関節肢をもった動物)の体は体節に分かれ、それぞれの体節には1対の肢と、それらを動かすのに必要な神経回路が備わっている。胴体部分の体節は見た目にもわかりやすいが、それに比べて頭部の体節はわかりにくい。数億年にわたる進化のせいで、本来の体節の関係性がよくわからなくなってしまったからだ。特に一番前の体節については議論が多く、現生の節足動物ではここに付属肢がついていない。この体節には、かつて付属肢があったのだろうか。大昔にいた奇妙な化石節足動物の一群に関する研究から、第1の体節には多くの場合付属肢があり、大きく立派な鋏の形をしたものもいたと見られるが、現生の節足動物からは確たる証拠が得られていなかった。  そこで着目されたのがウミグモ類である。この仲間は非常に原始的な節足動物だと広く考えられている。Maxmenたちはウミグモ幼生の神経構造を入念に調べ、実際に、最も前方にある体節から鋏のような付属肢(鋏肢[きょうし]という)へ、神経が分布して連絡していることを明らかにした。この鋏肢は、5億年以上前に深海底を歩き回っていた太古の節足動物にあった付属肢の名残なのかもしれない。

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