今週号には熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)に関する2つの研究結果が報告されている。まず1つ目の研究グループは、この原虫のタンパク質間相互作用の詳しいデータを今回初めて示した。マラリアによる死亡の90%がこの熱帯熱マラリア原虫によるものであり、毎年270万人もの命が奪われている。また2つ目の研究グループは、これらのデータを使って、熱帯熱マラリア原虫のタンパク質間相互作用が他の生物種と大きく違っていることを明らかにしている。 S Fieldsたちは、原虫に特有の2,846のタンパク質間相互作用を明らかにした。この相互作用ネットワークは、原虫の生理学的経路や過程を反映しているので、この情報はマラリア原虫の生物学的性質を理解する手助けとなり、新しいワクチンや薬剤標的の発見を加速してくれるはずだ。 S Suthramたちは、これらのタンパク質間相互作用の大部分がマラリア原虫に特有のもので、病原細菌や酵母、線虫やショウジョウバエなど他の生物種と共通していないことを明らかにしている。つまり原則的には、この研究成果から熱帯熱マラリア原虫だけを攻撃する抗マラリア薬の開発が可能になると考えられる。