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遺伝学:最後の狩猟採集民

Nature 507, 7491

2006年にラ・ブラーニャ遺跡で発見された中石器時代の男性の骨(発見当時)。
2006年にラ・ブラーニャ遺跡で発見された中石器時代の男性の骨(発見当時)。 | 拡大する

Credit: J.M. Vidal Encina

農耕の出現は、ヒトの生理的特性に、化石記録で明らかになっているようなさまざまな進化的変化を引き起こしたと考えられている。しかし、どの特性が変化したのかは、比較の基準となる農耕出現直前のヒトの生理的特性に関する記録がないため、正確には分かっていない。だが今回、C Lalueza-Foxたちが報告したスペインの中石器時代の狩猟採集民のゲノムは、その基準になるかもしれない。およそ7000年前に生存していたこの男性の遺伝子は、他のヨーロッパ人よりも、シベリアにいた古代人のゲノムとの共通点の方が多いことから、当時のユーラシアは全土にわたって、希薄ではあるが広範囲に広がる遺伝的連続性が存在したと考えられる。この男性は乳糖不耐性であったらしく、また、新石器時代の農耕民に比べてデンプンを含む食物をあまりよく消化できなかったようである。つまり、このような生理的変化は農耕とともに出現したのだろう。また、この男性は肌が浅黒く目が青いという珍しい組み合わせであったらしい。このことからすると、中石器時代には、現代ヨーロッパ人のような白い肌への移行はまだ不完全であり、目の色の変化の方が先に起こったようだ。

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