Nature ハイライト

がん:乳がんに見られる細胞不均一性

Nature 512, 7513

ヒトの乳がんは腫瘍内にゲノム不均一性が見られることが多く、そのため臨床診断が難しく、研究結果の解釈も複雑なものになっている。今回、この問題に取り組むために、新しい全ゲノム単一細胞塩基配列解読法(nuc-seqと命名)が開発された。この手法は、細胞周期のS期で生じる自然のゲノム重複を利用するもので、平均カバー率は91%に達する。この手法を用いて、単一の正常核およびエストロゲン受容体陽性の乳がんとトリプルネガティブの乳管がんから得た単一の腫瘍核について塩基配列解読が行われた。異数体の再構成は初期事象として起こり、クローン増殖の間も安定して残っている。対照的に、点変異は徐々に進化するように見え、広範なクローン多様性を生み出している。今回のデータは、腫瘍細胞では遺伝学的に全く同一の細胞が存在しないことも示しており、クローンの厳密な定義に関して興味深い疑問を提起している。

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