Nature ハイライト

進化生物学:海綿動物におけるAntennapediaクラス遺伝子の進化

Nature 514, 7524

海綿動物のボディープランは単純だが、ゲノムは複雑であり、より複雑な生物で体のパターン形成に関与するさまざまな転写因子を含んでいる。その一例であるAntennapediaクラス遺伝子群には、左右相称動物(体に明確な前端と後端がある動物)ではHox、ParaHox、NKといった遺伝子群が含まれる。尋常海綿類のAmphimedon queenslandicaのゲノムには、NK遺伝子の密なクラスターがあるが、HoxやParaHox遺伝子は存在しない。このことは、Hox遺伝子群やParaHox遺伝子群は、海綿動物が刺胞動物(クラゲやイソギンチャクなど)や左右相称動物につながる系統から分岐した後に進化したという仮説につながった。しかし、海綿ゲノムの全体構造の研究からは、かつては海綿動物にもHox遺伝子やParaHox遺伝子が存在し、後に失われたという「ゴースト遺伝子座仮説」が示唆されている。今回M Adamskaたちは、尋常海綿類とは別の系統である石灰海綿類の2種のゲノムを解析し、NK遺伝子群はクラスターを形成していないが、少なくとも1個のParaHox遺伝子(Cdx)があることを示した。これらの結果はゴースト遺伝子座仮説の裏付けとなり、また、祖先型動物に存在したAntennapedia遺伝子群についてより完全な全体像を得るためには、多様な海綿系統のゲノムを調べる必要があることを示している。

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