Nature ハイライト
細胞生物学:心疾患の新たな治療法
Nature 519, 7544
バイアグラなどによってホスホジエステラーゼ5A(PDE5A)を阻害すると、一酸化窒素により産生されたcGMPの分解が防がれて病的ストレスから心臓を保護できることが動物実験で示されている。しかし、一酸化窒素シグナル伝達は心血管疾患ではしばしば抑制されており、臨床試験におけるPDE5A阻害が期待外れの結果に終わっているのはこれによって説明できるかもしれない。今回D Kassたちは、ナトリウム利尿ペプチドに共役し、一酸化窒素には依存しないcGMPシグナル伝達を特異的に調節するPDE9Aが、また別の標的となり得ることを明らかにした。PDE9Aはヒトの心不全を起こした心臓で発現が上昇しており、マウスでPDE9Aを阻害すると、すでに成立したストレス誘発性心疾患を改善できる。PDE9A阻害薬はヒトでは忍容性が高く、神経認知疾患の臨床試験が行われている。今回の新たな結果から、これらの阻害薬は心疾患にも適用できる可能性がある。
2015年3月26日号の Nature ハイライト
細胞生物学:血管新生のMAP4K4による調節
生化学:複製起点依存的なDNA複製の初めてのin vitro系
量子物理学:集団での量子エンタングルメント
物理化学:閉じ込められてできた二次元正方格子状の氷
気候科学:降水量の増加と結び付く雲対流
神経科学:視床室傍核と学習・記憶
細胞生物学:細胞周期の長さへの隠れた影響
細胞生物学:心疾患の新たな治療法
分子生物学:RNAの天然状態での構造を探る