Nature ハイライト
分子生物学:RNAの天然状態での構造を探る
Nature 519, 7544
細胞のRNAは一本鎖であるために曲がりやすく、さまざまな二次構造をとることができ、それが機能に影響している可能性がある。だが、in vivoでRNAの構造を明らかにするために現在使われている方法は限られている。今回、このような問題に対処するための新しい手法が、2つの研究グループから報告された。H Changたちが開発したクリックケミストリーを基盤とする手法は、生細胞中のRNAの二次構造全体を、4つのヌクレオチド全てについて調べることを初めて可能にした。こうした構造の一部は安定で塩基配列によってあらかじめ決まっているらしいが、それら以外の構造は、タンパク質の結合や塩基の修飾を反映して変化する動的なものであることが分かった。この方法を使えば、in vivoでRNAを構造ゲノミクスの観点から解析できるようになるだろう。一方、J Uleたちは、hiCLIP法の開発について報告していて、この方法はタンパク質が結合したRNAの構造を特異的に判定することができる。この方法を使って、分子内結合が起きやすいこと、コード領域には構造があまり見られないことなど、さまざまな特徴が明らかになり、RNA構造に遺伝子発現を調節する働きがあることが確認された。また、コード領域でのSNPの頻度が予想よりも低いことも注目すべきだが、その機能的な意味合いはまだ明らかになっていない。
2015年3月26日号の Nature ハイライト
細胞生物学:血管新生のMAP4K4による調節
生化学:複製起点依存的なDNA複製の初めてのin vitro系
量子物理学:集団での量子エンタングルメント
物理化学:閉じ込められてできた二次元正方格子状の氷
気候科学:降水量の増加と結び付く雲対流
神経科学:視床室傍核と学習・記憶
細胞生物学:細胞周期の長さへの隠れた影響
細胞生物学:心疾患の新たな治療法
分子生物学:RNAの天然状態での構造を探る