Nature ハイライト
発生:ショウジョウバエでのモルフォゲンによるパターン形成
Nature 527, 7578
ショウジョウバエ(Drosophila)では、骨形成タンパク質のホモログであるモルフォゲンのデカペンタプレジック(Dpp)が、翅のパターン形成と成長の両方に関係付けられている。Dppは、発生中の翅(翅原基)の中央の縞状領域から分泌されて勾配を形成し、この勾配がパターン形成へのDppの関与に必須であると考えられている。Dppの勾配が組織全体にわたって増殖を促す仕組みについては以前から盛んに議論されているが、今週号ではさらに2つの研究グループがこのテーマについて報告している。S Harmansaたちは、膜に係留された抗GFP(緑色蛍光タンパク質)抗体を発現させて、GFPで標識したDppを翅原基の特定の領域に固定する「モルフォトラップ(morphotrap)」法を開発した。この手法を使うことで、Dppの拡散が起こらないと翅原基のパターン形成は損なわれるが、側方の細胞は正常に分裂を続けることが明らかになり、翅原基の側方部分の成長調節におけるDpp勾配の関与は除外された。一方、秋山琢也(米国スタワーズ医学研究所)とM Gibsonは、CRISPR–Cas9法を用いて、Dppの発現を中央の縞状領域から特異的に排除した。その結果、生じた個体はパターン形成異常を示したが、その細胞増殖や成長は比較的正常であった。このことから、縞状領域でのDpp発現は翅原基の成長調節に関与していないことが確認された。
2015年11月19日号の Nature ハイライト
発生:ショウジョウバエでのモルフォゲンによるパターン形成
抗生物質:黄色ブドウ球菌を標的とする新しい手法
がん:転移部位の選択には腫瘍のエキソソームが関与している
構造生物学:InsP3受容体の構造
天文学:形成途中の惑星
素粒子物理学:金を衝突させて反陽子対相関を探る
材料科学:メタンを効率よく貯蔵する媒体
気候科学:海洋低酸素化の熱的なきっかけ
進化学:脊椎動物の神経堤の起源はもっと古い