Nature ハイライト

構造生物学:GPCRの新たに見つかった状態

Nature 544, 7650

アンギオテンシン受容体のAT1RとAT2RはGタンパク質共役受容体(GPCR)で、血圧の調節に重要な役割を担っている。AT2Rは心保護薬の標的であるのに加えて、神経因性疼痛の治療のための重要な薬剤標的であり、AT1Rが関わる複数の作用を打ち消すと考えられているが、その構造や機能はよく分かっていない。今回、2種類のリガンドと緊密に結合して複合体を形成したAT2Rの複数の結晶構造が報告されている。これらの構造から、複数の膜貫通ヘリックスが活性化に似た状態をとる際に顕著なコンホメーション再編成を起こすことが明らかになった。これはクラスAの他のGPCRで見られるものと似ていたが、重要な違いが1つ見つかった。それは活性化状態に似たコンホメーションではヘリックスVIIIが標準的に見られるのとは異なる、非カノニカルな位置をとっていることである。そして、ヘリックスVIIIはこうした状態を安定化するだけでなく、Gタンパク質やβアレスチンの結合を阻害して、GPCRのカノニカルなシグナル伝達経路を遮断していた。この結果は、ここで使われたようなリガンドを「アゴニスト」、あるいは「アンタゴニスト」として区別したり、シグナル伝達のパートナー同士の相互作用が妨げられているこの状態を「活性化」と呼んだりすることに対して疑問を投げ掛けるものだ。

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