Nature ハイライト
神経変性疾患:神経変性疾患治療
Nature 544, 7650
アタキシン2のポリグルタミン鎖の伸長は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)のリスクを増加させ、脊髄小脳失調症2型(SCA2)の原因となる。これら2つの神経変性疾患の治療法はまだない。今週号の2報の論文で、アタキシン2を減少させる治療法が報告されている。D Scolesたちは、進行性の成体期発症ニューロンネットワーク機能障害および変性を再現する2つのSCA2モデルマウスで、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)を検討した。最も有望な治療リードであるASO7は、ATXN2のmRNAとタンパク質の発現を低下させ、SCA2表現型の発症を遅らせた。さらに、症状を呈したマウスに投与すると、小脳プルキンエ細胞の発火頻度が正常化し、運動機能が改善した。ほぼ全てのALS患者では、脳と脊髄にTDP-43タンパク質の毒性凝集体が見られ、酵母およびハエでアタキシン2を低下させるとTDP-43の毒性が抑えられることが示されている。L Beckerたちは、マウスで遺伝的に、あるいはアンチセンスオリゴヌクレオチドを用いてアタキシン2を低下させると、TDP-43の凝集と毒性が低下して運動機能が改善し、寿命が延びることを明らかにしている。どちらの報告も、アンチセンスオリゴヌクレオチドを用いた治療法が、神経変性疾患治療に使用できる可能性を示唆している。
2017年4月20日号の Nature ハイライト
疫学:流行の進化
神経科学:シナプス後部でAMPA受容体エキソサイトーシスを仲介するもの
生化学:オキセタノシンAの生合成
構造生物学:GPCRの新たに見つかった状態
材料科学:ガラスを3D印刷する
気候科学:融解水の流出が棚氷を安定させる
進化学:先史時代の歯垢から明らかになるネアンデルタール人の食生活
神経変性疾患:神経変性疾患治療
がん:食餌制限によるがん治療の検討