Nature ハイライト

進化学:先史時代の歯垢から明らかになるネアンデルタール人の食生活

Nature 544, 7650

エル・シドロン(スペイン)で出土したネアンデルタール人の上顎の骨。画像右側の大臼歯に歯石の蓄積が見られる。この個体は、アスピリンの有効成分であるサリチル酸を含むポプラや、天然の抗生物質を含むアオカビなどが生えた植物を食べていたらしい。
エル・シドロン(スペイン)で出土したネアンデルタール人の上顎の骨。画像右側の大臼歯に歯石の蓄積が見られる。この個体は、アスピリンの有効成分であるサリチル酸を含むポプラや、天然の抗生物質を含むアオカビなどが生えた植物を食べていたらしい。 | 拡大する

Credit: Paleoanthropology Group MNCN-CSIC

ネアンデルタール人の食餌に関しては、肉を多く含む食餌の証拠があるのに対して、それよりも多彩な食餌を示唆する歯の摩耗の証拠もあり、盛んな議論が続けられている。L Weyrichたちは今回、ヨーロッパ各地に由来するネアンデルタール人5個体の歯石から得たDNAの塩基配列を解読し、その食餌および健康状態を遺伝学的に再構築した。その結果、ベルギーのスピーで出土したネアンデルタール人はサイやヒツジの肉を食べていた一方、スペインのエル・シドロンで出土した別のネアンデルタール人はマツの実や蘚類、キノコ類を食べていたことが分かった。また、スペインのネアンデルタール人で歯性膿瘍および腸管病原体が認められた個体が、天然の鎮痛薬であるポプラ、および抗生物質を産生するアオカビ属細菌によるセルフメディケーションを行っていたことも示唆された。さらに、現時点で最古となる約4万8000年前の微生物Methanobrevibacter oralisのゲノムも見いだされた。

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