Nature ハイライト

がん幹細胞:がん幹細胞の可塑性を解析する

Nature 545, 7653

がん幹細胞は自己複製により腫瘍の増殖を維持すると考えられているが、ヒトのがん幹細胞のクローン動態や可塑性についてはあまり理解が進んでいない。下川真理子(慶應義塾大学)たちは今回、大腸がん患者由来のオルガノイドから単離した細胞をマウスへ移植して腫瘍の増殖を観察することで、Lgr5+がん幹細胞の役割を調べている。細胞系譜解析から、腫瘍の増殖がLgr5+細胞によって促進されること、またこの細胞が自己複製能およびKRT20+細胞への分化能を有することが分かった。意外にも、Lgr5+細胞の除去は一時的な腫瘍の縮小にしかつながらず、KRT20+細胞の代償性増殖やLgr5+細胞への脱分化によって、腫瘍は再増殖した。また、Lgr5の発現を上昇させる抗EGFR抗体での腫瘍の標的化は、Lgr5+細胞の除去と相乗的に作用して、腫瘍の増殖を阻止することも分かった。これらの知見は、階層的ながん幹細胞モデルにおける細胞の可塑性に新たな光を当てるとともに、新しい治療戦略を示している。

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