Nature ハイライト

古生物学:哺乳類の生殖様式の起源

Nature 561, 7721

頭骨のCTスキャン画像の比較。左から、現生爬虫類であるムカシトカゲの孵化幼体、今回発見されたステム群哺乳類カイエンタテリウムの孵化期幼体、そして現生哺乳類であるオポッサムの生後27日の幼体。
頭骨のCTスキャン画像の比較。左から、現生爬虫類であるムカシトカゲの孵化幼体、今回発見されたステム群哺乳類カイエンタテリウムの孵化期幼体、そして現生哺乳類であるオポッサムの生後27日の幼体。 | 拡大する

Credit: Eva Hoffman

哺乳類は、その名称が示すように、主に生殖様式によって定義される。現生哺乳類には卵を産むものがごくわずかに存在するが、哺乳類は一般に胎生であり、母乳で仔を育てる。哺乳類の生殖の進化史をたどるのは難しく、それは哺乳類の成体が歯以外の痕跡を後世に残すことがまれで、幼体の化石はさらに希少なためである。今回E HoffmanとT Roweは、北米西部の前期ジュラ紀(1億8400万年前)の堆積層で発見された、カイエンタテリウム(Kayentatherium wellesi)という動物の少なくとも38個体の孵化期幼体からなる化石の集合体とその母親と推定される成体の骨格を報告している。カイエンタテリウムは真の哺乳類ではなくトリティロドン類で、形態的には爬虫類と哺乳類の中間体である、いわゆる「哺乳類型爬虫類」と称される分類群(単弓類)に属する。38個体という一腹仔数は哺乳類に考えられるものとしては多過ぎるが、ワニなどの爬虫類では十分範囲内で、一腹仔数の減少は哺乳類進化においてより後に起こったことが示された。また、これらの幼体の頭蓋は成体のそれを縮小したものに似ており、その成長パターンは「大きな眼と短い顔」という哺乳類の幼体を連想させる顔つきよりもトカゲのものによく似ていることが示唆された。こうした顔つきの変化も同様に、その後の哺乳類進化において生じたと考えられる。今回の発見は、哺乳類進化の幕開けにおける動物の家族生活の1こまを映し出すものである。

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