Nature ハイライト
古生物学:哺乳類の生殖様式の起源
Nature 561, 7721
哺乳類は、その名称が示すように、主に生殖様式によって定義される。現生哺乳類には卵を産むものがごくわずかに存在するが、哺乳類は一般に胎生であり、母乳で仔を育てる。哺乳類の生殖の進化史をたどるのは難しく、それは哺乳類の成体が歯以外の痕跡を後世に残すことがまれで、幼体の化石はさらに希少なためである。今回E HoffmanとT Roweは、北米西部の前期ジュラ紀(1億8400万年前)の堆積層で発見された、カイエンタテリウム(Kayentatherium wellesi)という動物の少なくとも38個体の孵化期幼体からなる化石の集合体とその母親と推定される成体の骨格を報告している。カイエンタテリウムは真の哺乳類ではなくトリティロドン類で、形態的には爬虫類と哺乳類の中間体である、いわゆる「哺乳類型爬虫類」と称される分類群(単弓類)に属する。38個体という一腹仔数は哺乳類に考えられるものとしては多過ぎるが、ワニなどの爬虫類では十分範囲内で、一腹仔数の減少は哺乳類進化においてより後に起こったことが示された。また、これらの幼体の頭蓋は成体のそれを縮小したものに似ており、その成長パターンは「大きな眼と短い顔」という哺乳類の幼体を連想させる顔つきよりもトカゲのものによく似ていることが示唆された。こうした顔つきの変化も同様に、その後の哺乳類進化において生じたと考えられる。今回の発見は、哺乳類進化の幕開けにおける動物の家族生活の1こまを映し出すものである。
2018年9月6日号の Nature ハイライト
神経科学:空間と時間の統合された記憶
心血管生物学:グルタミンシンテターゼの新しい機能
構造生物学:マラリアのタンパク質を積み荷として宿主細胞内に運び込むトランスロコン
惑星科学:木星の意外なダイナモ
量子物理学:原子を並べ替える
古生物学:哺乳類の生殖様式の起源
生態学:マルハナバチに対するスルホキシイミン系農薬の亜致死性の影響
神経科学:線虫では幼若期のストレスが性成熟に影響を及ぼす
免疫学:免疫のパターン認識におけるALPK1の役割
構造生物学:ピック病で見られるタウ繊維の構造