Nature ハイライト
古生物学:初期の哺乳類が小さかった理由は顎の力学的構造で説明できる可能性がある
Nature 561, 7724
初期の哺乳類は、なぜあれほど小さかったのか。爬虫類から哺乳類への移行には、顎と頭蓋とをつなぐ関節における根本的な変化が関与していた。複数の骨で構成されていた下顎が単一の歯骨からなるものへと変化した一方、下顎の2つの骨が小型化して中耳の構成要素として組み込まれ、3つの耳小骨からなる哺乳類中耳を生じたのである。そこで、ある疑問が生じる。移行期の哺乳類はどのようにして、同じ組み合わせの骨を、獲物を捕らえてかみつくためのツールとしての機能(かなりの損耗や応力、負荷を伴う)と、聴覚という繊細で精密な機能の両方に使うことができたのか。そのカギは最小化にあったと考えられる。今回S Lautenschlagerたちは、哺乳類の小型化が、その独特な顎関節の進化と関係していた可能性について明らかにしている。解剖学的構造の復元とモデル設計により、体サイズの小型化が、関与するさまざまな骨にかかる応力の最小化につながったことが分かった。これによって咬合力も減少したが、その速度ははるかに遅く、指数的ではなく線形的であった。顎の小型化は、哺乳類進化のこの極めて重要な段階において、咬合力の減少を最小にしつつ顎関節にかかる応力を減少させるという最適な妥協点をもたらしたのである。
2018年9月27日号の Nature ハイライト
ゲノミクス:造血幹細胞の生涯の軌跡
免疫学:広域中和抗体の臨床応用
生化学:de novo βバレルの設計
構造生物学:片頭痛に関係するCGRP受容体の構造がついに明らかになった
材料科学:自律的に再構成されるメタマテリアル
光学材料:自己給電型フレキシブルエレクトロニクスに向けて
古生物学:初期の哺乳類が小さかった理由は顎の力学的構造で説明できる可能性がある
神経回路:対象物の能動的感知に体性感覚皮質は不要かもしれない
神経科学:体性感覚皮質は脊髄での触覚情報処理を調節する
細胞生物学:微小核における核膜組み立て異常の理解
構造生物学:膜に結合したレトロマーのクローズアップ