Nature ハイライト

構造生物学:Tc毒素の活性化機構

Nature 563, 7730

さまざまな病原性細菌で見つかるTc毒素は、TcA、TcBおよびTcCという3つのサブユニットから構成され、TcCのC末端が自己タンパク質分解的に切断されると、毒性酵素が生じる。TcAは移行チャネルを形成し、TcB–TcCヘテロ二量体はTcCのC末端に位置する毒性酵素を保護する繭として機能している。繭がチャネルに結合すると、繭の一部が開いて毒性酵素のチャネル内への移行が引き起こされる。今回、完全なTc毒素複合体の近原子分解能でのクライオ(極低温)電子顕微鏡構造とX線結晶学的解析、分子動力学シミュレーション、水素重水素交換質量分析(HDX-MS)、それに生化学分析の結果を統合して、Tc毒素活性化の独特な機構が原子レベルで詳細に解明された。毒素は3つの構成要素の集合により活性化される。つまり、TcB–TcCヘテロ二量体のTcAとの結合によりTcBのβプロベラ構造がほどけて、別のコンホメーションになるようにたたみ直され、これによって繭が開くのである。

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