Nature ハイライト
構造生物学:リガンド結合によって構造が複雑化するセロトニン受容体
Nature 563, 7730
5-HT3セロトニン受容体はリガンド依存性の五量体陽イオンチャネルで、興奮性神経伝達に関わっており、中枢神経系の中でも痛みや吐き気などを担う領域で発現されている。5-HT3受容体の構造についてはある程度の情報は得られているが、チャネルのゲート開閉の基盤やセロトニン結合の際のコンホメーション変化は十分に解明されていない。今回、2つの研究グループが、異なるコンホメーションにある5-HT3A受容体の複数の構造をクライオ(極低温)電子顕微鏡法を用いて決定している。S Chakrapaniたちは、セロトニンが結合した2種類の状態を調べ、チャネル開口の基本機構に加えて、受容体側面にイオン透過孔が開くことを明らかにした。H Nuryたちは、5-HT3Aの4種類の構造(制吐剤との複合体、セロトニンとの複合体でカルシウムがある場合とない場合、セロトニンおよび正のアロステリック調節因子との複合体)を解き、小孔の水和状態の動態や、ゲート位置での動き、陽イオンの接近可能性を明らかにしている。
2018年11月8日号の Nature ハイライト
免疫遺伝学:遺伝子の分岐と自然免疫
生物物理学:生物学における能動的超弾性
構造生物学:Tc毒素の活性化機構
量子物理学:極低温気体における普遍性の探索
生化学:グリコシル化の理解を深める
地質学:地球最古の生命の痕跡への疑義
神経科学:脳でのタンパク質翻訳
幹細胞:骨を長くする
構造生物学:リガンド結合によって構造が複雑化するセロトニン受容体