Nature ハイライト
加齢:レトロトランスポーザブルエレメントが老化細胞でインフラメージングを引き起こす
Nature 566, 7742
レトロトランスポーザブルエレメント(RTE)の活性は有害な作用を起こす可能性があり、RTEの活性化は加齢とともに高まる。ヒトのRTEのうち、自律的なレトロトランスポジションが可能なものは、L1(long-interspersed element-1;別名LINE-1)のみである。今回J Sedivyたちは、マウスとヒトの細胞で、細胞老化の際に、L1エレメントの転写抑制が解除され、I型インターフェロン(IFN-I)応答を引き起こすことを示している。IFN-I応答のロバストな活性化は老化細胞の新たな表現型の1つであり、いわゆる老化関連分泌表現型に著しく寄与することが明らかになった。IFN-I応答はISD(IFN-stimulatory DNA)経路を介して起こり、L1相補的DNA(cDNA)合成を阻害するヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤(NRTI)によって拮抗される。意外にも、老齢マウスにNRTIを投与すると、IFN-I応答に効果的に拮抗できるだけでなく、加齢関連炎症や、腎臓の糸球体硬化症や骨格筋萎縮などの加齢関連表現型も抑制した。インフラメージング(inflammaging)とも呼ばれる無菌性炎症は加齢の特徴の1つであり、さまざまな加齢関連疾患に関与すると考えられている。著者たちは、L1エレメントの活性化がインフラメージングを促進し、L1逆転写酵素は加齢関連疾患の治療薬開発の標的になる可能性があると述べている。
2019年2月7日号の Nature ハイライト
量子物理学:多体物理学の新しい解釈
加齢:レトロトランスポーザブルエレメントが老化細胞でインフラメージングを引き起こす
構造生物学:ついに明らかになったクラスC GPCRの構造
オプトメカニクス:振動子を極限まで追い込む
生化学:自然が作るN–N結合
神経科学:幹細胞機能の翻訳調節
生物工学:CopyCatはマウスで超メンデル遺伝を誘導する
免疫学:樹状突起伸長の仕組み
生理学:腸管の上皮細胞間Tリンパ球が全身の代謝を調節する
がんモデル:がんの成長パターン
細胞生物学:Sec61チャネルの構造